old home

skit:9

Posted by flour



センと魔法商店街9


◆◇◆


下宿先の秋の新商品はチョコレートマカロン。
濃厚なガナッシュクリームたっぷりな魅惑の一品!ファキア訪問の手土産にと、おかみに包んでもらうことにした。

「ふっふっふ、喜ばれること間違いなしであります!」

おかみは特製の保冷箱を取り出して、これで移動中に気温が上がっても大丈夫、と太鼓判。綺麗にリボンをかけると、センに手渡し――

「…ちゃんと戻って来るんだろうね、セン」

ぎょっとして顔を見ると、いつもの笑顔はどこへやら、真剣な表情。

「センは、灯台を見に行くだけであります。とも、友達と、お世話になった教官に会いにゆくのであります……」

これはもうすでに一度、おかみに伝えたこと。
――それだけか?
おかみの目に浮かぶ懸念には、心当たりがないわけでなく。すこし、胸のうちを探った。

「……センにもまだ、わかりませぬが……記憶の手掛かりがあるやも知れませぬ。最近チカチカと頭に降ってくるものがあります。それを掴むのは…おそろしいような気もいたします。ですが…」

行かねば、と続け。

「戻ってまいります。センが何を思い出したとしても、ここには必ず。」

そう告げると、おかみはひとつ息をつき、猫耳フードを優しく叩いて店先へと戻って行った。

厨房に満ちるチョコレートの匂い。
馴染み始めた、センの今の日常。
なくすなら一瞬だと自分が知っているのは、なぜなのか。









スポンサーサイト